北海道の山の中
祖父母の家というのは北海道の山の中だった。
農家で米やら野菜やらを作っていて、牛が10頭くらいいて、鶏がいて、馬もいた。
朝から乳搾りやらなにやらで忙しかった。
おかげで食べるものはすべて自前で採れたてだった。
今から思えば贅沢なことだったんだけど、牛乳は搾りたて、卵は産みたて、野菜は採れたて、という今では望むべくもない食生活だった。
でも、それ全部自分たちで育てるわけだからたいへんだった。
子供の時から手伝いもさせられた。
その頃の農作業の記憶は断片的だけど妙にいつまでも忘れない。
動物が苦手だったから正直あまり楽しい記憶はない。
鶏小屋に卵をとりに行くのは恐怖だったし、
部屋の中をかけまわるヒヨコを捕まえるのも恐怖でしかなかった。
牛のつなぎかえもこわかった。
そんなだったからよく「役に立たない」と言われていた。
田植えや稲刈りも手伝わされたし、もちろん畑仕事も。
まぁその山の中にいたのは小学校までだったからまだよかったかも。
今になってみると貴重な経験だったけど、二度としたくはない。